シャヌーン幻想

ー黄金のファラオー
作・演出・中村 暁 より







設  定
(背  景)
はじめに

 
              このお話の主人公となる、シャヌーンは、

「黄金のファラオ」の登場人物ですが。

アラザの使者として登場し、刺客としてファラオに挑むものの、

捕らえられその命を、自ら絶ちます。

その背景に何があったのか。

これは、そんな彼の隠された部分を、イメージしてみました。






彼は何故、アラザの使者として、エジプトヘ行ったか。



              まずポイントとして、他の使者より身なりがよいこと、

これは彼の身分につながります。
(単にスター衣装と言ってしまえば、身も蓋もないのですが)

彼は民の声を代表して、ファラオを討とうとしますが、

使者に立つと言うことは、他の二人も少なくとも貴族階級であると、

予想できるので、(この時代殆どが王国であったと考えられます。)

彼は王族につながる者ではないでしょうか…。

(普通の国民が、国を代表するとは考えにくいし。)


それでは、仮定作業をしていきたいと思います。


エジプト アラザの戦争は、エジプトの勝利に終わります。

負けると言うことは、隷属を意味します。

シャヌーンを、王族いえ、アラザの王の息子の一人だと、考えても良いと思います。

       戦の時彼は何処にいたのか。

国外に出ていたと考えるのが妥当でしょう。

小国がその身を守るために、王族の子弟を、人質に出す事は、珍しい事ではありません。

支配権がエジプトに移った事と、彼がそれなりの年齢に達していたために、

国元に戻されたのだと思われます。

人質として他国で暮らしながら、守ろうとしていた自分の国に戻った

シャヌーンが見た物は、以前より過酷になった、国民の現状だったと思われます。

そして何より、王族だからこその屈辱。

たぶん国王は、戦の際命を落としている筈です。

国が倒れたと同時に、自らの家も倒れていたのです。

そう、戦で彼以外の王族は皆殺しにされ、

エジプト側は、国外にいたシャヌーンの存在を知らなかったとしたら。

国を憂い、復讐を誓うシャヌーン像が出来上がっても良いと思います。

だからこそ、最初から死ぬつもりで、使者にたてるのではないのでしょうか。

王族としての誇りを賭けて、ファラオに討えかけようとした、シャヌーン。

ファラオの誇りに訴えかけたかったのでしょうが、

奇しくもそれは、元々奴隷として生きてきたセティに、ファラオとは、

何かを指し示すきっかけになります。

彼は何故自らの命を絶つのか。

そうするしかなかったのです。

たぶんファラオを見事討ち取っても、同じだったでしょう。

生きて捕らえられる、それは、考えに入っていたとは思えません。

最初から覚悟は出来ていたのですから。


以上のことを、念頭に置いて。次へ進みたいと思います。






人物設定(イメージ配役)


シャヌーン(朝澄 けい)
アラザの国の長兄。(第一王位継承者)

そのために、国元から同盟国(アラザの方が弱小国と考える)に、

人質として出されていた。

人質という立場上、剣を持つことは許されず(反逆を意味する。)

そのため、武より文(智)に優れ、智の王子と呼ばれることもあった。

自分を押さえて生きていた部分もあるので、逆に感情的になると本来の激しさが、

彼を追い込むことになる。





セイレム(真飛 聖)
シャヌーンが暮らす同盟国の王子。兄弟同様に育つ。

彼はシャヌーンの智に対して、武の王子として、

ある程度の年齢になると、戦に参加していた。

対照的な立場と、それを裏付けるような性格。

腕が立ち、口にする言葉こそ悪いが、その中に彼本来の、温かさ、優しさがある。

自分の力で、人々の幸せが守れるなら、 剣を取り命を懸ける。

そこに自分の存在を確信していた。





アリーシャ(映美 くらら)
セイレムの妹姫。

兄と同様にシャヌーンと共に育つ。

彼を慕いながらも、その想いが、叶えられないであろう事を、

知っているかのようだった。

大人しく、口数も少ないのだが、王家の姫として、

    芯に計り知れない強さを持っている。

父王や兄が、シャヌーンとの婚姻を望んでくれていることは、嬉しく思っていた。





ラシード(水瀬 あお)
アラザから、シャヌーンを連れに、やってきた男。

実はシャヌーンとは、乳兄弟にあたる。

シャヌーンが光ならば、彼はその影であった。

アラザの国を、王家を取り戻すために、彼も又、その身を捧げる覚悟であった。

シャヌーンを連れ戻り、彼を導き人々の暮らしを見せて、

何時の日か、王としてたつ日のために、沢山の事を教えてゆく。





タチアナ(陽色 萌)
ラシードの妹。

王家に使える家の娘ではあるが、とにかく明るく、活動的な性格。

兄に連れられて戻った、シャヌーンに最初は少し反発を感じていたが、

次第に想いをよせることになる。





リシャール
シャヌーンの弟。彼だけが、ラシード達に匿われて生き延びた。

末の王子にあたるため、シャヌーンが不在の時期に誕生した。

国が倒れたことで、皮肉にも兄との対面が果たせたとも言える。

(アラザの国が無事なら、時が来ればシャヌーンと入れ替わりに、

人質として送られていた筈である。)

今はまだ幼いが、彼の存在は仲間の心の支えになっていた。









参 考 資 料

   ツタンカーメン 全4巻     作・山岸 涼子       潮出版社 
    妖女伝説(第 1巻 砂漠の女王)作・星野 之宣  集英社文庫コミック
    小説「聖書物語」旧約篇 上下巻 作・ウォルター・ワンゲリン
                     訳・仲村 明子       徳間書店
   小説「聖書物語」新約篇     作・ウォルター・ワンゲリン
                    訳・仲村 明子       徳間書店





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